映画の舞台はアメリカ、シカゴ。
ベトナム戦争に反対する活動家たちが逮捕され、起訴され裁判で戦うというストーリーです。
長く、理不尽なことばかりの裁判ですが、活動の目的を忘れず懸命に走りぬく彼らの頑張りに釘付けです。
本作品はアーロン・ソーキンが監督のネットフリックスオリジナルの映画です。
衝撃の実話をもとにしたストーリーのみならず、エディ・レッドメイン、サシャ・バロン・コーエン、マイケル・キートンなど豪華なキャスト陣にも注目が集まります。
実話の部分と実話ではない部分を検証しつつご紹介します。
映画「シカゴ7裁判」のキャスト
監督 アーロン・ソーキン
1961年、アメリカニューヨーク市生まれ。
俳優を目指すが執筆に魅力を感じ、脚本家の道を選ぶ。
1992年「ア・フュー・グッドメン」でハリウッドデビューを飾る。
2010年「ソーシャル・ネットワーク」ではアカデミー賞脚色賞にノミネートされている。
アビー・ホフマン役 サシャ・バロン・コーエン
1971年、イギリスロンドン生まれ。
2000年から放送の「Da Ali G Show」では英国アカデミー賞、ロイヤル・テレヴィジョン・ソサエティ賞を受賞。
エミー賞、サテライト賞にもノミネートされた。
トム・ヘイデン役 エディ・レッドメイン
1982年、イギリスロンドン生まれ。
2002年にプロデビュー。
2015年に「博士と彼女のセオリー」でアカデミー主演男優賞を受賞し、ゴールデングローブ賞主演男優賞、英国アカデミー賞主演男優賞、全米映画俳優組合賞を受賞。
ボビー・シール役 ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世
1986年、アメリカニューオリンズ州生まれ。
ミュージカル映画「グレイテスト・ショーマン」でヒュー・ジャックマン、ミシェル・ウィリアムスらと共演。多くの映画やテレビドラマで活躍している。
ジェリー・ルービン役 ジェレミー・ストロング
1978年、アメリカボストン生まれ。
2008年にブロードウェイでデビュー。テレビドラマ「サクセッション」ではプライムタイム・エミー賞主演男優賞ドラマシリーズ部門を受賞している。
リチャード・H・シュルツ役 ジョセフ・ゴードン=レヴィット
1981年、アメリカカリフォルニア州生まれ。
1992年子役でキャリアをスタート。
2009年公開の「500日のサマー」ではゴールデングローブ賞主演男優賞ミュージカル・コメディ部門にノミネートされた。
ジュリアス・ホフマン役 フランク・ランジェラ
1938年、アメリカニュージャージー州生まれ。
1975年「海の風景」でトニー賞演劇助演男優賞を受賞し注目を浴びる。
2007年舞台の「フロスト/ニクソン」では初のトニー賞演劇主演男優賞を受賞するなど数々の作品で高い評価を受けている。
デイヴィッド・デリンジャー役 ジョン・キャロル・リンチ
1963年、アメリカコロラド州生まれ。
大学在学中に演劇に目覚め、1993年より映画やテレビに出演し、その後も数多くの作品で活躍している。
ウィリアム・クンスラー役 マーク・ライランス
1960年、イギリス生まれ。
俳優としてのみならず、シェイクスピア・グローブ座の芸術監督を10年間務めた。
様々な作品に出演し、ローレンス・オリビエ賞やトニー賞など何度も受賞している。
ラムゼイ・クラーク司法長官役 マイケル・キートン
1951年、アメリカペンシルベニア州生まれ。
スタンドアップコメディアンとして芸能界デビューし、1982年「ラブ・イン・ニューヨーク」で映画デビュー。
2014年「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」ではゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞し、アカデミー主演男優賞にもノミネートされた。
映画「シカゴ7裁判」はどこからどこまで実話?
「シカゴ7裁判」はアーロン・ソーキン監督が、実際の裁判を題材に脚本を書いた作品となっています。
本当だったら驚いてしまうようなストーリーではありますが、出演者、内容とも全てが実話ベースです。
シカゴでの暴動では警官、デモ隊ともに数百名の負傷者を出し、8人の警察官と8人のデモ隊が起訴されました。
本作品では、シカゴ・セブンと呼ばれたデモ隊7人の裁判に焦点を当てたストーリーとなっています。
映画ではリチャード検事は後ろ髪をひかれる思いで、この主任検事を引き受け、時折被告人たちを擁護するような役柄です。
ところが、実際のリチャード検事は、被告人側には目もくれず敵として存在したようです。
また、ボビー・シールが手錠と猿ぐつわをされたシーンでは、すぐに開放されるも、実際はこの状態が3日続いたと言われています。
実にショックな事実です。
さらに、本作品の心揺さぶられるラストシーン。
トムが戦死者の名前を呼ぶ場面は実際、判事の命令により中断され全員を読み上げることはできませんでした。
シリアスな政治裁判ですが、エンターテイメントに脚色され見やすく、そして興味をひく展開はアーロン監督のオリジナルということでしょうか。
シカゴ7裁判のネタバレ
民主社会学生同盟を牽引するトム・ヘイデンとレニー・デイヴィス、成年国際党のアビー・ホフマンとジェリー・ルービン。
彼らはベトナム戦争に反対し活動する若者たち。
彼らは第35回民主党全国大会でデモ抗議をおこなう為、仲間たちにシカゴへ行くことを呼びかける。
他にもベトナム戦争終結運動のリーダー、デイヴィッド・デリンジャーとブラックパンサー党全国委員長のボビー・シールもシカゴへ向かおうとしていました。
民主党全国大会を来週に控えた頃、それぞれが準備を始めています。
トムはアビーにデモでは反戦を訴え、バカなことはしないよう話しをするも、アビーは「俺は両方やれる」と意気揚々と答えます。
トムとレニーは真面目に、アビーとジェリーはコミカルに仲間へ訴えますが、どちらも計画していたのは平和的なデモ。
当日、シカゴにはイリノイ州兵の4部隊5000人が派遣され、民主党大会は警察国家で始まろうとしていました。
大会から5か月が経った頃、連邦検察官のリチャード・シュルツとその上司トーマス・フォランは新しく長官となったジョン・ミッチェルに会う為、司法省にいました。
彼は「シカゴで起きたことは最悪だった」と民主党全国大会での暴動の出来事を切り出します。
リチャードが呼ばれた目的はトムら「オールスター」を訴える為。
トム、レニー、アビー、ジェリー、デイヴィッド、ジョン・フロイネス、リー・ワイナー、さらにボビーまでも。
リチャードは耳を疑います。彼らが起訴にあたることをしていないのは、リチャードも分かっていました。
しかし、ミッチェル長官に強引に押されたリチャードは、この裁判の主任検事を担当することに。裁判初日、アメリカ中がこの裁判に注目していました。
被告人側代理人はウィリアム・クンスラーとレナード・ワイングラス。
1969年9月26日、連邦地方裁判所イリノイ州北部地区法廷にて、ホフマン判事をはじめとする12名の陪審員とともに裁判が開廷しました。
ボビーは判事に代理人が入院中で不在の為、自分も弁護を受ける権利があると訴えます。
ところが判事はボビーの発言を許しません。
裁判が開かれる前、ボビーは代理人が戻ってから裁判を始めるよう延期の申し立てをしたにも関わらず、それすら受け入れられませんでした。
ボビーはシカゴでの暴動とは無縁の自分が起訴されているのは、印象を悪くするために黒人だからだと言います。
ボビーは警察殺しの容疑で逮捕されていましたが、仲間のフレッドがボビーの冤罪を必死に訴えます。
ある時、判事はフレッドがボビーに法的助言を与えていると判断し、彼をボビーの代理人に任命しました。
判事のやり方は、尋問記録の削除命令をしたり、法廷侮辱罪だと発言をやめさせたりめちゃくちゃです。
トムらは共謀事務所にて、続く裁判に向け動いていました。
ある時、ワイングラスは考察から陪審員のうち6番と11番の2名は、自分たちの味方であることに気づきます。
そんな時、クンスラーとワイングラスは判事から、陪審員2人の両親にブラックパンサーから脅迫状が届いたと伝えられます。
2人とは味方であった6番と11番。
判事は2名の陪審員を呼び、こう尋ねます。
両親がボビーの率いる団体に脅迫されたが、今後公平な判断を下すのは難しいかと。
そして頷いた2人の陪審員は、その場で任を解かれることに。
クンスラーは、脅迫状の送り主が別物であることを確信していました。
結果的に判事の独断による陪審員の隔離命令であったことが分かりました。
とある夜のこと、フレッドが警察に射殺されるという事件が。
ボビーは黒人であるが故に受けた差別に静かに腹を立てています。
公判89日目、ボビーは再び反対尋問をしたいと訴えるも、判事は拒否し発言を押さえつけます。
我慢の限界を迎えたボビーは立ち上がり、フレッドは暗殺されたと叫びます。
判事はボビーにしかるべき対処をするよう指示し、ボビーは一度退出させられてしまいました。
そして、戻って来たボビーの姿に全員が動揺します。
手は鎖で縛られ、口は布で覆われていました。
判事はそのまま裁判を続けようとしましたが、リチャードは判事に常軌を逸したやり方だと訴え、ボビーをこの件から除外するよう協議を持ちかけます。
誰が見てもボビーはシカゴでの暴動とは無関係でした。
クンスラーとワイングラスも続けて黒人差別であると訴え、ボビーは審理無効に。
その日の夜、アビーはジョンとリーが起訴された理由についてこう語ります。
無罪確定の2人を被告人として入れることで、陪審員が心おきなく他の被告人を有罪にする為だと。
政治裁判
アビーはこの理不尽な裁判を政治裁判と呼びます。
そしてレニーは「この訴えがミッチェル長官のラムゼイ・クラーク前長官への当てつけだとしたら皮肉だ」と言い、ハッとしたクンスラーとワイングラス。
二人はトムを連れクラーク前長官に被告側証人になってもらうよう依頼しに行きます。
リスクがあるものの、クラークは快諾し、証言台に立つことに。
当時、クラークは大統領から暴動について起訴の意思があるか聞かれ、起訴はしないと答えていました。
そして、その理由は刑事局の調査結果で、暴動を始めたのはシカゴ市警と判明したから。
そして司法省の調査でも同じことが明らかになったと証言しました。
ところが、重要な証言ではないとの判断がされ、クラークは退廷します。
その夜、クンスラーはデモ隊の誰かが届けた暴動当時のテープと宣誓供述書を手に入れました。
暴動が起きた夜のこと。
デモ隊の講演には多くの未成年者が参加していました。
ポールに登る少年を見た警察官が無理やり少年を下ろし、殴りかかります。
それを見たレニーは少年を守るために警察官を引き離そうと仲裁に入りましたが、レニーは警察官に警棒で頭を殴られてしまいました。
デモ隊が過激になっていく中、デイヴィッドはデモ隊を落ち着かせるようトムに話をします。
しかし、血を流すレニーを見たトムは理性を失いマイクを通して「血が流れるなら街中で血を流させろ」とデモ隊を煽ったのです。
その瞬間、暴動は始まりました。
トムの言葉はテープにハッキリと録音されていました。
クンスラーに誰が暴動を起こしたかを聞かれたトムは「我らの血」と答えます。
アビーはトムが「我らの血が流れるなら街中で流させろ」と言いたかったことに気づきます。
つまりは、警察の横暴をみんなに見てほしいという意味だったのです。
アビーはトムの著書を全て読み、彼の言葉足らずな言い回しを理解していました。
そして証人に選ばれたアビーは裁判で事の真相を語ります。
ラスト
公判151日目、判決が下される前に被告人の裁判所への意見陳述が許可されました。
判事は裁判中おとなしくしていたトムに将来を感じていると言い、さらには意見陳述で敬意と後悔の念を簡潔に述べれば、それによっては量刑を好意的に考慮するとも。
そしてトムが陳述を述べ始めます。
それは、裁判が始まってからベトナム戦争により戦死したアメリカ兵4752人の名前でした。
判事がやめるよう指示するも読み続けるトム。
その場にいたほとんどの人が、リチャードまでもが立ち上がり拍手をし、戦死者に敬意を示すのでした。
トム、アビー、レニー、ジェリー、デイヴィッドは暴動の扇動で有罪判決が下り、刑期5年が言い渡されました。
第7管轄区連邦控訴裁判所は判決を覆し再審を命令し、連邦地検は再起訴を断念。
クンスラーは24件の法廷侮辱罪に問われ、ホフマン判事はシカゴ法廷弁護士の78%に不適格と判断されました。
そしてボビーの殺人容疑は冤罪と判明。
ジェリーは株式仲介人となりましたが、1994年交通事故で死亡、アビーはベストセラーを執筆するも1989年に自殺。
トムは1982年にカリフォルニア州議会議員に当選し、その後も6選を果たしました。
シカゴ7裁判の感想まとめ
起訴された彼らは、アプローチの仕方が違っても、ただ真剣に戦争を反対していただけでした。
時々当時の映像が映し出される場面には、これが現実に起こっていたことに信憑性を持たせ、心が痛くなりました。
特に、判事のボビーへの態度があまりにも理不尽で腹正しい場面も。
この判事のような偏った判決を下すことが、現実にあるならば絶対に許されないこと。
最近でもアメリカでは黒人の差別問題が問題視され続けていますが、この映画を通して人種差別はずっと昔から行われていることが分かり、本当に悲しくなります。
トムとアビーは揉める事も多くありましたが、アビーが最もトムを理解していたこと、彼らが一つになる場面など感動してしまうラスト。
最終的に有罪判決が出たものの、彼らの戦い抜いた姿に真の勝利を感じました。
この背景となったベトナム戦争や当時アメリカで起きていた事について私は正直、よく理解していませんでした。
しかし、ストーリーが分かりやすい展開なので歴史について分からない人でも見やすく、面白い作品となっています。
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