2006年公開TBSテレビ50周年記念企画「涙そうそうプロジェクト」として劇場映画化された作品。
沖縄を舞台に、血がつながっていない兄妹の愛情を描いた物語です。
歌手、森山良子が実際に亡くなった兄を想い作った名曲「涙そうそう」をベースに作られた映画となっています。
「いま、会いにゆきます」の土井裕泰が監督を務め、長澤まさみ、妻夫木聡をダブル主演に迎え豪華なキャスティングとなっています。
切ないストーリーと主題歌がマッチし涙なしには見ることができない感動作です。
目次
映画「涙そうそう」の監督&キャスト
監督 土井裕泰
1964年、広島県出身。
大学卒業後、TBSに入社し数々のテレビドラマを演出。
代表作には「愛していると言ってくれ」「ビューティフルライフ」「グッドラック」などがある。
2004年公開の映画「いま、会いにゆきます。」では新藤兼人賞を受賞している。
新垣洋太郎役 妻夫木聡
1980年、福岡県出身。
高校時代より読者モデルを務め、人気を博す。
1997年「アホポン・プロジェクト」でグランプリに選ばれ、翌年俳優デビュー。
2001年公開の映画「ウォーターボーイズ」で映画初主演を果たし第25回日本アカデミー賞では優秀主演男優賞・新人俳優賞をW受賞している。
2020年は、危険なビーナスで主演を務めている。
新垣カオル役 長澤まさみ
1987年、静岡県出身。
2000年東宝シンデレラオーディションで史上最年少の12歳でグランプリに選ばれ芸能界入りを果たす。
「クロスファイア」で映画デビューし、ティーン雑誌のモデルなども務めた。2003年公開「ロボコン」、2004年公開「世界の中心で、愛をさけぶ」では日本アカデミー賞を受賞している。
稲嶺恵子役 麻生久美子
1978年、千葉県出身。
1995年に「全国女子高生制服コレクション」でグランプリを受賞。
同年映画デビューを果たす。
1998年公開の「カンゾー先生」では日本アカデミー賞最優秀助演女優賞、新人俳優賞をはじめ数々の映画賞を受賞。
テレビドラマ「時効警察」ではコミカルな演技で人気となった。
島袋勇一役 塚本高史
1982年、東京都出身。
1996年、サンミュージック新人タレントオーディション俳優部門に入賞。
翌年役者デビュー。
映画「バトルロワイヤル」や「木更津キャッツアイ」「タイガー&ドラゴン」など数々の人気作品に出演し活躍する俳優。
新垣ミト役 平良とみ
1928年、沖縄県出身。
子役より活躍し、拠点を沖縄においたまま劇団に所属し活躍していた。2001年、NHK連続テレビ小説「ちゅらさん」で主人公の祖母を演じ大ブレイク。
2015年、敗血症による呼吸不全の為87歳で永眠。
新垣光江役 小泉今日子
1966年、神奈川県出身。
1981年「スター誕生!」に出場し合格。
翌年アイドルとして歌手デビュー。
「花の82年組」と呼ばれる一人。
楽曲のみならず、映画やテレビドラマなど数々の作品に出演し日本アカデミー賞やブルーリボン賞などに選ばれ高い評価を受ける。
2016年には企画制作プロジェクト「明後日」を立ち上げている。
涙そうそうは実話?元ネタは?
元ネタである「涙そうそう」は歌手、森山良子さんの名曲です。
この名曲が生まれたきっかけは森山さん自身の経験にありました。
森山さんには一つ年上のお兄さんがいました。
とても仲が良く、歌手デビュー後も愚痴を聞いてくれていたのはお兄さんだったようです。
ところが、お兄さんは大学卒業後、23歳という若さで突然心不全に襲われて亡くなられています。
その頃、森山さんは歌手活動から一時離れた時期で何かと家族に心配をかけていました。
もちろんお兄さんが亡くなった原因とは直接の関係はないようですが、彼女自身やるせない思いが残っていたと言います。
20年ほど経ち、歌手グループBEGINが作ったメロディに「涙そうそう」というタイトルがつき、森山さんのもとへ。
「涙そうそう」は「涙がポロポロ溢れてくる様子」という意味を知り、涙がポロポロと溢れだしました。
こうしてお兄さんへの想いを歌詞にした森山さん。
自身の実際のエピソードである曲の世界観をモチーフにして作られたのが本作品です。
大好きな妹
市場や居酒屋で働く新垣洋太郎は将来自分の店を出す夢があり、朝から晩まで働き詰めです。
洋太郎にはカオルという名の妹がいます。
洋太郎が8歳のとき母・光江はバンドマンであった男に惚れ、再婚し義父の連れ子であったカオルが義妹となりました。
光江は男性に振り回されやすく、再婚したと思いきや義父がある日家を出て行ってしまうのです。
その後、光江は病気で他界してしまい、洋太郎とカオルは離島に住む祖母・ミトとともに暮らすことに。
洋太郎は高校卒業後、沖縄本島に戻っていました。
そんなある日、カオルは本島の高校に通うため洋太郎のもとに越してくることに。
洋太郎には医学部に通う秀才女子の恵子という恋人がいました。
カオルと会うようになった恵子は洋太郎のカオルへの溺愛ぶりに少し嫉妬し始めます。
その頃洋太郎は自分の店をオープンさせるために準備に取り掛かっていました。
友達の協力もあり、居酒屋「なんくる」をオープンさせた洋太郎。オープン当日、洋太郎は詐欺にあっていたことを知ります。
買ったはずの店はなかったことになり、借金だけが残った洋太郎は悔しくて涙が止まりません。
また朝から晩まで働く日々がやってきました。ある日、恵子の父・義郎が洋太郎を訪ねてやってきます。
義郎は多額の金を差し出し、恵子は医者になる身だから別れるようにと言いました。
後日恵子は謝りに来ましたが、二人の仲は修復されることなく別れる事に。
分かれ道
カオルは洋太郎の借金返済に協力するため、秘密でアルバイトをしていました。
琉球大学を目指す、カオル。
受験を控えた大切な時期にアルバイトをしていたカオルに対して洋太郎は怒りビンタをしてしまいます。
そして洋太郎は泣きついてきたカオルを一度は受け止めたものの結局、突き放してしまいました。
カオルは大学に合格し、洋太郎と暮らしていた家を出たいと言ってきます。
洋太郎が少し落胆し、友人たちに相談すると、カオルが中年男性と会っているところを見かけたという情報が入ります。
店に向かった洋太郎はステージで演奏する義父を見つけます。
話をすると、義父は1年前くらいに本島に戻っていました。
カオルから生い立ちを聞いた義父は「血のつながりがない義妹にこんなに面倒みてくれたのだから感謝しろ。そろそろ兄を解放してやれ」と伝えたと言います。
血のつながりがないことを勝手に話した義父に洋太郎は怒り殴りかかりました。
洋太郎はカオルが一人暮らしをすることに賛成し、出ていく当日カオルが「長い間お世話になりました」と挨拶をすると二人は大泣きしながら分かれました。
映画「涙そうそう」の結末!兄の死因は?
それからというもの、近くにはいたけれど1年半も会わなかった二人。
洋太郎は成人式には島に帰るというカオルからの手紙を受け取ります。
沖縄本島には大型の台風が迫ってきていました。
カオルのアパートは窓ガラスが突風で割れ、恐怖のあまりカオルは部屋で泣いています。
そんな時、ドアをたたく音が鳴り洋太郎の声が。
洋太郎に助けられたカオル。
洋太郎はすぐにアパートを修復してくれました。
すると突然洋太郎が倒れてしまいました。
すぐに病院に運ばれた洋太郎ですが、長年働きっぱなしの体はボロボロで心筋炎を併発。
あっという間に洋太郎は死んでしまいました。
葬式は祖母の家で行われ、魂をとられてしまったように呆然と涙を流すカオル。
ちょうどその時、カオル宛に荷物が届きます。
送り主は洋太郎で、荷物は成人式に着る着物だったのです。
借金返済で大変だったにもかかわらず自分のために着物を買ってくれていた兄の愛情に涙が止まらないのでした。
エンドロールでは幼い頃、にカオルが「お兄ちゃんと結婚したい」と言うと「兄弟は結婚できない」と洋太郎が答えるシーンで幕を閉じます。
映画「涙そうそう」の感想
二人は兄と妹。
だけど、複雑な家庭環境があり兄が妹を守ってきました。
二人で苦楽を乗り越え、愛情はいつしかただの兄妹ではなくなっていくという内容が切なくてたまりませんでした。
二人は距離を取ったけど離れて改めて気持ちに気づく、そんな展開を予想していました。
しかし、実際は突然具合が悪くなった洋太郎があっという間に死んでしまうなんて。
あまりに突然、思ってもみないタイミングでの急展開に驚きが隠せませんでした。
そのシーンをみて、こんなことならば遠慮なんかせずにもっと気持ちに素直になればよかったのにと悔しい気持ちになりました。
カオルは「大好き」や「愛している」と何度も伝えましたが洋太郎は見ているこちらが辛くなるほど気持ちを抑え込んでいました。
儚い人生、悔いなく生きていくべきだとただただ思いました。
印象的だったのは、一人暮らしをしたカオルが台風に襲われ大変だったときのこと。
居るはずのない洋太郎が勘づいてカオルを助けに来た場面。
これには愛する妹をどこまでも守り抜く兄としての姿に感動でした。
そして洋太郎が亡くなった後、カオルのもとには洋太郎がカオルのために用意していた成人式の着物と手紙が。
主題歌がより感動的に演出し、涙が止まらない素晴らしいラストだと思いました。